おっかさんのいない実家に二週間ばかり帰っていた。

5月末に一回来て二ヶ月ぶりなのだが、変化があった。
前回ばたばたして周りを見ている暇もなかったせいもあるが、


お隣のおじさんは100まで生きて息子の世話をするといっていたのに、脳梗塞で入院したそうだ。日曜日になると外泊するらしく声が聞こえる。それ以外空き家のような静けさ。日がな一日えさ入れらしい金物の入れ物をひっくり返してごとごと騒々しかった犬も死んだように横になっていた。

世話をしたい息子(知恵遅れといわれている、既に40を過ぎた)は妙にはしゃいで立とした出で立ちで自転車に乗っていた。


トラブルな奥さん(未亡人)も静かだった。オイラよりたぶん10才くらいは年上。母上を先年亡くし、母の無い子になったせいかやっぱり老けた。手入れの悪い掃除機をそのまま使っているのでものすごい音がする。前は網戸なんかも刷っていたのに部屋の中だけになってそれも週に一回しかしていない。道行く人を捕まえてはオイラの庭の悪口をわめいていたが二回しか目撃出来なかった。あまりの暑さで道行く人もほとんどいないという事情もあったけど。いよいよ、それとなく敬遠されているのかもしれない。

子供達に言われてみれば、近くのお社に日に5回6回とお参りに来ていたオイラが小学生だった頃はさわやか青年教師の姿がなかった。

小学校でやかましく啼いていた山羊の声が聞こえなかった。

そうしてオイラもショウウィンドウに映る姿はすっかり婆さんになっていた。